小学校高学年から中学生の成長期の頃に多く見られる膝のお皿の下の痛み。特にスポーツをしている子供に多く見られ、お皿の下の骨がボコっと出てくる症状も見受けられます。その病態はオスグッド病と言われるものかもしれません。
今回は子供の時期に多いオスグッド病について解説していきます。
目次
成長期の膝の痛み!オスグッド病とは?
オスグッド病とはスポーツをしている小学校高学年から中学生くらいの成長期の子供に見られる膝の障害です。正確な病名はオスグッド・シュラッター病といわれます。
特に男の子に多く、バレーボールやバスケットボールなどのジャンプ動作の多いものを中心にサッカー、野球、陸上など多くのスポーツで見受けられます。
ちなみにオスグッド・シュラッター病という名前は、1903年にオスグッドという人とシュラッターという人によってこの病態を報告されたためとされています。
成長期の膝の痛み!オスグッド病の症状
膝の曲げ伸ばしをした際にお皿の下の骨に痛みが生じます。
特にスクワット動作やジャンプ動作など体重がかかった状態での膝を曲げる動き、正座、階段の昇り降りなどで痛みが生じます。
また膝のお皿の下の骨を押すと痛みがあり、腫れや熱感を伴う事もあります。
写真のような膝のお皿の下の骨がボコっと突出する所見が見受けられます。
運動をすると痛み、休むと痛みはなくなりますが、また運動を再開すると痛みが生じます。
オスグッド病の症状
成長期の膝の痛み!オスグッド病の原因は?
なぜ膝のお皿の下の骨が痛くなるのか、骨が突出してくるのか。
まずは膝の骨と筋肉について説明します。
膝の構造
膝には膝蓋骨(しつがいこつ)、大腿骨(だいたいこつ)、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)という骨が存在します。
また大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という筋肉が骨盤から膝蓋骨を介して脛骨の脛骨粗面という場所に付いています。
膝が曲がる動作では大腿四頭筋が収縮するため、脛骨粗面には引っ張られるストレスがかかります。
このストレスの反復が脛骨粗面を引っ張る事によって膝の痛みとなるのです。
また成長期の骨には骨端線、または成長軟骨と呼ばれる柔らかい部分が存在します。この成長軟骨が伸びる事によって骨が成長するのです。
成長軟骨は柔らかい組織であるため、筋肉などで引っ張られるストレスに脆弱である事から、骨が突出してきてしまいます。
これがオスグッド病で骨が突出してきてしまう原因です。
オスグッド病になりやすい子供の特徴
バスケットやバレー、サッカーをしている子供が皆オスグッド病になるわけではありません。体の特徴や使い方によってオスグッド病になりやすい特徴があります。
①大腿四頭筋が硬い
オスグッド病の一番の原因として太ももにある大腿四頭筋が硬いことが挙げられます。大腿四頭筋が脛骨粗面を引っ張るストレスがかかる事でオスグッド病になるとお伝えしましたが、大腿四頭筋が硬いとより強いストレスがかかってしまいます。
出典:運動機能障害の「なぜ?」がわかる評価戦略
うつ伏せになって膝を曲げて見てください。踵がお尻にくっつかなかったり、お尻が上がってしまう(尻上がり現象)が見られたら大腿四頭筋の硬さが疑われます。これはエリーテストと呼ばれる検査方法です。
②身長が急激に伸びた
成長期には骨が伸び、身長が高くなります。特に10〜16歳の間は非常に成長しやすく、骨の成長に対し、筋肉の長さが追いつかなくなる事があります。すると骨に対して筋肉の長さが短くなり結果的に硬く伸びにくい筋肉となってしまいます。
③スクワット、ジャンプの着地の際に重心が後方になりやすい
スクワットやジャンプの着地の際には体重が乗った状態で膝を曲げます。
この時に上半身の位置によって膝にかかるストレスが変わります。
試しにやってみると、
上半身が膝より前にある状態と
上半身が膝より後方にある状態
どっちの方が大腿四頭筋に負担がかかるでしょうか?
明らかに上半身が後方にあると大腿四頭筋がキツくなると思います。難しい話なので簡単に説明すると、上半身が後方にあるとそのままでは後方に倒れてしまいますよね?
その際に倒れないように体にブレーキをかけているのが大腿四頭筋です。
そのため上半身が後方にあるスクワット動作、ジャンプ動作の癖がある人は過剰に大腿四頭筋を活動させている事になりオスグッド病になりやすくなります。
また上半身が後方になりやすい人の特徴としては、
- 猫背
- 骨盤が後傾位(後ろに倒れている)
- 足首が硬い
- 股関節(特に後ろの筋肉)が硬い
というのが挙げられます。
オスグッド病の診断
オスグッド病は整形外科などでレントゲンを撮る事で診断されます。骨の突起や脛骨粗面の圧痛所見がみられれば医師にオスグッド病と診断されることが多いです。
オスグッド病の治療
オスグッド病は基本的に保存療法(手術など体への侵襲はしない)で経過をみていきます。オスグッド病と診断をされたらまずは痛みの出る運動を控える事が大切です。
特にジャンプ動作やキック動作など大腿四頭筋の強い収縮を伴う膝の曲げ伸ばしは避けましょう。骨が突出してしてしまうと、大人になっても戻らないのと、重症となると剥離骨折となってしまうため注意が必要です。
オスグッド病の予防法~膝に負担のかからない体作り~
オスグッド病になりやすい体の特徴として、大腿四頭筋が硬い事、スクワットやジャンプ動作で後方重心となりやすい事を先ほど挙げました。
これらを改善する事が膝への負担を軽減し、オスグッド病の予防となります。そのためのストレッチや筋トレお伝えていきます。
①大腿四頭筋のストレッチ
方法1
立った状態で足首を持ち、踵がお尻にくっつくように膝を曲げていきます。太ももの前の部分が痛気持ちいい程度に伸びている状態で静止し30秒以上ゆっくりとストレッチします。
方法2
横になって反対側の膝を曲げます。伸ばす方の足首を持ち踵がお尻にくっつくように膝を曲げていきます。
※反対側の膝を曲げておく事によって骨盤が固定されるため効果的にストレッチすることができます。
②ふくらはぎのストレッチ(足首の硬さの改善)
伸ばす方の足を後ろに引いて、前に体重をかけていきます。踵が床から離れないように、つま先が真っ直ぐ前を向いている状態を維持し、ふくらはぎが痛気持ちいい程度に伸びている状態で静止し、30秒以上ゆっくりとストレッチします。
膝を伸ばした状態と曲げた状態で行う事で伸ばされる筋肉が変わるので両方行うとよいでしょう。
③臀部のストレッチ(骨盤後傾の改善)
伸ばす方の足を上にして写真のように組みます。背中が丸まらないようにして体を前傾させます。臀部が伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチします。
④ハムストリングスのストレッチ(骨盤後傾の改善)
伸ばす方の足を前して伸ばし、体が丸まらないように前傾させていきます。太ももの裏が伸びている事を感じながら30秒以上ストレッチします。
⑤胸椎のストレッチ(猫背の改善)
方法1
頭の後ろで手を組み、顎を引いたまま胸を張り、肘を開いて行きます。頭を天井にくっつけるようなイメージで上に伸びていきます。
方法2
仰向けでバスタオルを丸めたものを背中に入れ、手を組んでバンザイをします。30秒以上ゆっくりとストレッチします。
⑥腸腰筋の筋トレ(骨盤前傾の促し)
背骨から大腿骨に付いている大腰筋という筋肉と骨盤から大腿骨についている腸骨筋という筋肉があります。これらを合わせて腸腰筋と呼びます。
この筋肉は骨盤を前傾させる働きがあるため、スクワット動作の改善に効果的です。
座って背中を真っ直ぐにしたまま、足踏みをするように足を挙げます。この時背中が丸まらないように、膝を少し外に向かってあげるのがポイントです。
交互に繰り返します。
⑦スクワットエクササイズ
台を使い踵を出した状態でのスクワットを行う事で後方重心の動作を改善する事ができます。なぜならこの状態で後方重心だと後ろに転倒してしまうため、必然的に前に重心を持っていく事が必要となるからです。
足首の柔軟性、骨盤を前傾させる動き、胸を張る動きが要求されます。
オスグッド病のテーピング
オスグッド病の痛みを和らげる目的でテーピングを使用する事も有効です。あくまで症状を軽減させる事が目的で、根本的な治療ではない事を念頭に置いておいて下さい。テーピングは伸縮性のあるキネシオロジーテープを使用します。
①
膝を曲げます。この時の角度は痛みが出ない角度とします。
②
膝の内側から脛骨粗面と膝蓋骨の間を通るように大腿部まで斜めに貼っていきます。テ‐ピングは引っ張り過ぎず、皺が寄らない程度に貼っていきます。
※テーピングの角を丸く切っておくと剥がれにくいです。
③
②と反対側に外側から交差するようにテーピングを貼ります。
④
膝蓋骨と脛骨粗面の間に真横にテーピングを貼ります。
痛みが出ない程度に少し両側を引っ張って押し付けるようにして貼ります。
オスグット病のサポーター
オスグッド病はサポーターを着用する事でも症状を軽減する事が可能です。サポーターにも色々種類がありますが、膝のお皿の下に巻くタイプの物が望ましいでしょう。
サポーターを巻いて膝蓋腱を圧迫する事で脛骨粗面の負担を軽減できるからです
オスグッド病オススメサポーター
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ZAMST(ザムスト)
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ZAMST(ザムスト)
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まとめ
- オスグット病は成長期の子供に多い膝の痛みで、筋肉に骨が引っ張られる事によって発症する。
- 大腿四頭筋の柔軟性改善、足首の柔軟性改善、後方重心での動作の改善が重要なポイントである。
※痛みが続く場合は医師の診断を受ける事、理学療法士、トレーナーに身体評価をしてもらう事が大切です。
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