【セラピスト向け】リハビリで遭遇しやすい膝の前面の痛みについて。原因と部位の考え方

臨床で良く遭遇する膝の痛み。その中でも膝の前面に生じる痛みの原因と部位の考え方について書いて行きます。

膝の前面に起こる力学的ストレス

膝の前面に生じる痛みは、何かしらの力学的ストレスがかかり、組織が損傷する事によって発生します。その力学的ストレスは大きく二つに分けられます。

  • 伸張ストレス
  • 圧縮ストレス

それぞれの力学的ストレスは以下の時に発生します。

伸張ストレス
スクワットやしゃがみ動作などで、膝の前面が伸張された時に生じます。

圧縮ストレス
深くしゃがんだ時や階段降段などで大腿骨に対して膝蓋骨が圧縮された際
また膝が外反した時に膝蓋骨が外方に引かれて膝蓋骨外側関節面が圧縮された際に生じます。

伸張ストレスによって膝の前面に痛みが生じる場合

膝の前面が伸張されて痛みが生じている場合、痛みが生じている部位として主に考えられるのは、

  • 脛骨粗面
  • 膝蓋靭帯・膝蓋支帯
  • 膝蓋下脂肪体

が挙げられます。

脛骨粗面

脛骨粗面は成長期の時期は脆弱な軟骨組織で出来ています。そのため大腿四頭筋の収縮による牽引力によって、同部位に炎症や部分的剥離、微小裂離骨折が生じて痛みが生じます。10~14歳の発育期のスポーツ選手に多く見られるオスグッドシュラッター病はその典型的な例です。

膝蓋靭帯・膝蓋支帯

膝蓋靭帯は膝の屈曲により伸張ストレスを受けますが、膝が生理的外反を有している事から、特に内側の方が伸張ストレスを受けやすいとされています。伸張ストレスによって損傷を受け炎症した膝蓋靭帯は、変性やコラーゲン線維の配列の乱れが生じると言われています。そのため一度炎症を起こすと、再度炎症や痛みを引き起こしやすくなります。膝蓋靭帯損傷はバスケットボールやバレーボールなどに多い、ジャンパー膝と呼ばれる病態が代表的です。

膝蓋支帯は内側と外側とに分けられます。

内側膝蓋支帯:内側広筋の遠位に伸びた線維から構成される

外側膝蓋支帯:外側広筋の遠位に伸びた線維が腸脛靭帯と合流して構成

画像引用:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション

膝蓋支帯は関節鏡手術時の侵襲部位となるため、術後の拘縮を引き起こしやすく、膝蓋骨の運動が阻害され、周囲の軟部組織の疼痛を引き起こします。

膝蓋下脂肪体

画像引用:運動機能障害のなぜ?がわかる評価戦略

膝蓋下脂肪体は膝蓋靭帯の後方に存在する脂肪組織で、大腿神経、閉鎖神経、坐骨神経などの豊富な神経支配を受けます。自由神経終末といった疼痛受容器も豊富であるため、痛みを生じやすい組織です。

膝の屈伸運動に従ってその形状を変え、非常に柔軟性に富んでいます。繰り返される機械的ストレスにより、炎症を起こしたり、組織が線維化する事によって、その柔軟性は失われます。そうなると屈伸運動時の形態変化が出来なくなり、内圧が上昇し、痛みが発生するといわれています。

膝蓋下脂肪体の疼痛誘発テスト
膝を30~60°屈曲位とし、膝蓋靭帯を避けて膝蓋下脂肪体を圧迫します。 その状態で膝を伸展させていき、痛みが出れば膝蓋下脂肪体の線維化や炎症が疑われます。

膝の前面に伸張ストレスを生じさせている原因は?

膝の前面の痛みの部位の推測が出来たら、なぜその伸張ストレスが生じているのかの原因を考察していく事が必要です。

伸張ストレスが過剰になる原因として挙げられるのは、動作中の過剰な膝伸展モーメントです。そしてその大きな要因は後方重心が考えられます。

以下は2つのスクワット動作の写真です。

①前方重心

膝伸展モーメントは強くなく、膝前面へのストレスは少ない。

②後方重心

膝伸展モーメントが過剰で、膝前面のストレスが大きい。

実際に自分で行ってみると明らかに、後者の方が大腿四頭筋に過剰なストレスがかかり、膝前面の伸張ストレスが増大する事がわかるかと思います。

このような後方重心となる主な機能的な要因は以下が挙げられます。

  • 股関節伸展筋の筋力低下
  • 腸腰筋の筋力低下(骨盤の前傾不足)
  • 足関節の背屈制限
  • 大腿四頭筋の伸張性低下
  • 膝蓋下脂肪体の拘縮
  • 胸椎の伸展不足

股関節伸展筋の筋力低下

大殿筋はスクワット動作時に股関節伸展モーメントを引き出すため、動作中の外部股関節屈曲モーメントに抗して骨盤の前傾を維持します。股関節伸展筋力が低下すると骨盤の後傾を招き、後方重心となりやすくなります。

腸腰筋の筋力低下

腸腰筋は腰椎の前弯、骨盤前傾の保持に重要となります。腸腰筋の筋力低下により、骨盤の前傾位が保持できなくなると腰椎の後弯、骨盤の後傾が生まれ、後方重心となります。

足関節の背屈制限

背屈制限が起こると、荷重時の下腿の前傾が制限されます。下腿の前傾が制限されると重心の前方移動が困難となり、後方重心となります。

大腿四頭筋の伸張性低下

大腿四頭筋の伸張性低下は、膝の前面痛の原因となる脛骨粗面、膝蓋靭帯、膝蓋支帯、膝蓋下脂肪体の伸張ストレスを直接的に増加させ、痛みの原因となります。

膝蓋下脂肪体の拘縮

膝蓋下脂肪体は膝蓋骨や半月板に付着しています。拘縮が生じると半月板や膝蓋骨の動きを制限してしまいます。その結果、大腿四頭筋はより高い活動を強いられる事となり、膝前面に伸張ストレスが生じやすくなります。

圧縮ストレスによって膝の前面に痛みが生じる場合

膝の前面が伸張されて痛みが生じている場合、痛みが生じている部位として主に考えられるのは、膝蓋大腿関節です。

膝蓋大腿関節

膝蓋骨と大腿骨とで形成される関節で、膝蓋大腿関節の安定化には大腿四頭筋の働きが重要となります。特に内側広筋と外側広筋とのバランスが重要です。

比較的多くみられるのは、内側広筋の機能不全、外側広筋の過緊張で、これが生じると膝蓋骨は外上方へ牽引されます。それによって、膝蓋骨外側面への圧縮ストレスが強まり痛みが生じやすくなります。

また脛骨大腿関節のアライメント異常によっても、膝蓋骨外側面への圧縮ストレスが増大します。多く見られるのはQアングルの増大で、増大する事によって膝蓋骨が外側に強く引っ張られ、圧迫力が強くなります。

Qアングルとは
上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ線で、および膝蓋骨中央から脛骨粗面上縁中央を結んだ角度を指します。正常は20°以下。 Knee inや下腿の過外旋によってQアングルは増大する。

Qアングル

画像引用:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション

膝蓋大腿関節の疼痛誘発テスト

膝蓋大腿関節の疼痛誘発テスト
膝を伸展位として、膝蓋骨を上から圧迫します。圧迫した状態で内側、または外側へ誘導します。 疼痛が生じた場合は陽性です。

膝の前面に圧縮ストレスを生じさせている原因は?

膝蓋大腿関節の圧縮ストレスの場合、矢状面と前額面と分けて考えなければなりません。

矢状面の場合

主な問題となるのは後方重心です。

  • 大腿四頭筋の伸張性低下
  • 大腿四頭筋の筋力低下
  • 足関節の背屈制限
  • 骨盤後傾による後方重心

大腿四頭筋の伸張性低下

大腿四頭筋の伸張性低下によって、膝屈曲時の膝蓋骨の下方への動きを制限してしまいます。それによって、膝蓋大腿関節の圧縮ストレスが増加して痛みを引き起こします。

大腿四頭筋の筋力低下

特に多くみられるのは内側広筋の筋力低下で、外側広筋の方が優位に働いてしまう事で、膝蓋骨の外上方変位を引き起こします。それにより膝蓋大腿関節の外側の圧縮ストレスが強まり痛みを生じます。

足関節の背屈制限

足関節の背屈制限により、下腿の前傾が制限され、荷重位での膝屈曲時動作時に後方重心となります。そうなる事で膝蓋大腿関節の圧縮ストレスが強まり、痛みを生じます。

また背屈制限を距骨下関節の回内や足部の外転で代償してしまい、膝の前額面上での外側の圧縮ストレスも強まります。

骨盤の後傾

骨盤の後傾は後方重心となるため、膝蓋大腿関節の圧縮ストレスが増強します。

骨盤の後傾を誘引する要素は多く、

  • 腸腰筋の筋力低下
  • ハムストリングスの短縮
  • 股関節屈曲制限
  • 多裂筋の筋力低下
  • 大臀筋の筋力低下

などなど他にも色々な要素があるので個別に評価する事が大切です。

前額面の場合

主に問題となるのは膝の外反です。

  • 股関節外転筋の筋力低下
  • 足関節・足部の過回内

股関節外転筋の筋力低下

外転筋の筋力低下がみられると、荷重時に大腿骨が骨盤に対して内転内旋してしまい、膝の外反を引き起こします。膝の外反により膝蓋大腿関節の圧縮ストレスを強め、痛みを引き起こします。

足部の過回内

足部の過回内がみられると、下腿が内旋・内方傾斜し、膝の外反を引き起こします。これにより膝蓋大腿関節の圧縮ストレスを強め痛みを引き起こします。

まとめ

膝の前面の痛みは、荷重位で膝を曲げる動作時のアライメントが起因している事が多い印象です。

矢状面での後方重心、前額面での膝の外反が問題となるケースを多くみかけます。

そのアライメントを助長してしまっている原因を評価してアプローチして行く事が、痛みの改善につながります。

もちろん痛みの原因にはもっと他にもたくさんあるかと思いますが、比較的臨床で遭遇しやすいものを挙げました。評価や痛みの仮説の参考になれればと思います!

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