手の指や腕に起こる
●痺れ
●痛み
●冷感
●重だるさ
といった症状。
その症状を引き起こす病態の一つに胸郭出口症候群というものがあります。
スマホやPC作業、重たいショルダーバックを持ち歩く人、または野球やバレーボールなどで腕を振り上げる動作が多い人になりやすい傾向にあります、
今回はその胸郭出口症候群について解説していきます。
目次
胸郭出口症候群とは?
首の前から鎖骨周辺の位置を胸郭出口と呼びます。この部位で神経が圧迫されたり、引き伸ばされることによって腕や手の指に痺れや重だるさ、痛み、冷感などの症状がでる病態を胸郭出口症候群と呼びます。
正座を長時間すると足が痺れますよね?
あれは正座の姿勢によって足にある神経を圧迫してしまい痺れが生じているのです。手の痺れもそれと全く同じ原理で、首や鎖骨周囲で手を支配している神経を圧迫してしまい、手に痺れが生じているのです。
胸郭出口症候群は女性に多く、20〜40代の人によくみられます。
特になで肩の人になりやすい傾向があります。
胸郭出口症候群の症状

胸郭出口症候群の主な症状
胸郭出口症候群のメカニズム
①斜角筋症候群
斜角筋とは写真のように首の骨から第1肋骨と第2肋骨についています。主に首を前に倒したり、横に倒したり、肋骨を上に挙上する作用があります。前斜角筋と中斜角筋の間を神経と血管が通っています。この斜角筋の部分で神経と血管を圧迫するものを斜角筋症候群と呼びます。
②肋鎖症候群
写真の赤丸で示した部分を肋鎖間隙といいいます。鎖骨と第1肋骨の間の隙間を差します。この肋鎖間隙を神経と血管が通っており、ここで圧迫を受けるものを肋鎖症候群と呼びます。
この症状はなで肩の女性に多くみられるのが特徴です。
③小胸筋症候群(過外転症候群)
小胸筋とは胸の前にある筋肉で第3、第4、第5肋骨から肩甲骨の鳥口突起という部分まで付着している筋肉です。腕を横に挙げる動きにをするとこの小胸筋が引っ張られて伸びます。この小胸筋の下を神経と血管が通っており、この部位で圧迫をされて症状が起こるのを小胸筋症候群もしくは過外転症候群といいます。
胸郭出口症候群かどうかを調べるテスト方法
①モーレーテスト
出典:理学療法ハンドブック 改訂第3版
鎖骨の真ん中よりやや内側の1横指分上の部分を指で圧迫します。
痛みや腕への痛み、痺れが生じた場合は斜角筋症候群が疑われます。
②アドソンテスト
出典:理学療法ハンドブック 改訂第3版
症状が出る方の手首の部分で脈拍をとります。脈がピクピク打っているのを確認して下さい。大きく息を吸って息を止め、首を後ろに倒して、症状が出る側に首を回旋させます。脈拍の強さが弱まったり、脈が感じられなくなったら斜角筋症候群が疑われます。
③エデンテスト
出典:理学慮法ハンドブック 改訂第3版
座った姿勢で胸を張ります。手首の部分で脈拍をとります。
そこから腕を少し後ろに引いて下に引っ張ると脈拍が弱まったり、消失する場合は肋鎖症候群が疑われます。
④ライトテスト
出典:理学療法ハンドブック 改訂第3版
手首の部分で脈拍をとり写真のように肘腕を上に挙げた位置をとります。脈拍が弱まったり、感じられなくなった場合、小胸筋症候群(過外転症候群)が疑われます。
⑤ルーツテスト
出典:理学療法ハンドブック 改訂第3版
腕を上に挙げ、手をグーパーさせる運動を3分間繰り返します。痺れや痛みが生じた場合、小胸筋症候群(過外転症候群)が疑われます。
⑥アレンテスト
出典:理学療法ハンドブック 改訂第3版
症状の出る方の手を上に挙げて、肘を直角に曲げて脈拍をとります。その状態から首を反対側に回旋させて脈拍が弱まる、もしくは消失したら胸郭出口症候群が疑われます。
胸郭出口症候群の治療法
症状が軽度の場合
腕を長く挙げたり、首に負担のかかる動きなど症状を悪化させる動作を禁止します。病院では消炎鎮痛剤、血流改善剤、ビタミンB1なども処方されます。
症状が重度の場合
胸郭出口症候群の症状が重度の場合は原因の筋肉や骨を切除する手術を行う場合もあります。正座時の足の痺れは時間が経つと治るかと思いますが、胸郭出口症候群も同じで圧迫されているものがなくなれば症状は治ります。
胸郭出口症候群の予防・ストレッチ
斜角筋ストレッチ
伸ばす方の鎖骨の上を手で抑えます。首を反対に倒しながら後ろに反らします。顎を上に突き上げるような感じで伸ばします。首の前側が伸びているのを感じながら30秒以上ストレッチします。
小胸筋ストレッチ
壁を横にして立ちます。腕を後方に伸ばして手のひらを上に向け、壁で固定します。腕を固定したまま体を反対に回旋させます。胸の前面が伸びている事を感じ30秒以上ストレッチします。
※別法
頭の後ろで手を組みます。背中を真っ直ぐ伸ばし、天井に頭をつけるようなイメージで上に伸びながら、両肘を開いて胸を張ります。
鎖骨周囲、胸部のマッサージ
鎖骨のしたから肩にかけての小胸筋部分にテニスボールを当てて壁で押しながらマッサージをします。痛気持ちいいと感じる程度の力でマッサージする事で小胸筋をほぐす事ができます。
僧帽筋トレーニング(なで肩の人向け)
①
肩を耳に近づけるようにすくめます。すくめた状態で5〜10秒程度止めます。これを繰り返し行います。
②
壁に万歳をした状態で手を付きます。そこから手を離して肩甲骨を内側に寄せるように近づけ5~10秒止めます。これを繰り返し行います。この時に胸を張って顎を引いた状態で行うと効果的です。
胸郭出口症候群の生活での予防策
重たいリュックやショルダーバッグを避ける
肩に重みが加わる事によって鎖骨を引き下げてしまい、胸郭出口症候群の原因箇所となる肋鎖間隙を狭くしてしまいます。
電話を頭と肩で挟まない
電話を受けながら作業をする際に、頭と肩で挟んで行う光景をよくみます。これは斜角筋を緊張させてしまうため、長時間となると胸郭出口症候群を引き起こす事となります。
姿勢に注意
背中が丸まり、頭が前に出ている姿勢は斜角筋や小胸筋が縮まりやすく胸郭出口症候群の原因となりえます。パソコンやスマホ使用の際の姿勢に要注意です。
対策としてはパソコンデスクの高さを高くしたり、骨盤の後ろにクッションを置いて骨盤を起こすなどの環境設定も重要となってきます。
まとめ
私の治療での経験上、デスクワークをしている人、重たい荷物を持ち運びしている人、特に女性に多い印象があります。筋肉の柔軟性や肩甲骨の筋トレが予防として重要ですが、日常生活でいかに負担をかけないかが非常に重要なポイントであるように感じます。特に重たい荷物を持つ習慣や、不良姿勢になりやすい人は要注意です。
- 胸郭出口症候群とは首や鎖骨周囲で血管や神経が圧迫をされることで起こりやすい。
- 普段の生活でいかに負担をかけないかが重要である。